モンスーンがやって来た

  ムンバイでは、モンスーンの季節が始まり1か月半が過ぎようとしています。モンスーンは通常6月頃からインドに到達し、9月頃まで雨の日が多くなります。私が着任した昨年はモンスーンによる雨が少なかったようですが、今年の雨は例年どおりと言われています。雨は6月8日の降り始めから10日間ほぼ毎日降りました。ムンバイの町は大雨の度に道路や鉄道が水につかり、バスや列車など人々の足が被害を被りました。雨は一日中降り続くことは少ないですが、降るとなると短時間でも大雨となり、下の写真のように町の低地は直ぐに池や川に様変わりします。私も昨年9月頃、車で町に出ていた時に雨に降られ、低地の交差点には高台に降った雨が道路を通って勢いよく流れ込み、水は深いところでは成人男性の膝上までの高さになりました。交差点を脱した後も自宅への坂を上る時はまるで谷川を車で沢登りしているような感覚だったのを覚えています。

  インドにとってモンスーンは農地を潤す恵みの雨を運びます。モンスーン時の降雨量は農産物の作柄に大きく影響し、昨年は雨が少なかったため作柄が悪く国民の多数を占める農家の収益が悪化、インド経済全体にも影響を与えました。ムンバイでも基本的にモンスーンは恵みの雨を運ぶと考えられており、雨の到来を祝う「雨踊り」もあります。しかし過ぎたるは及ばざるがごとし、モンスーンの大雨は様々な面で人々の生活にマイナスの影響も与えます。特にムンバイのように陸地が海水面から高くない(平均海抜1mとの話もあります)土地では、雨が満潮と重なる場合には町の多くが水に浸ります。

  今年のモンスーンの雨について6月中頃当地の新聞は次のように報じています。
○今年のモンスーンは降り始めから10日間でコラバ地区(旧市街)では748.9mmに達し、同地区年間降雨量の3分の1になった。
○6月16日には1日で232.2mmの雨が降り、ムンバイ市では、51本の木が倒れ、郊外電車が線路冠水のため一時運休、市内バスも冠水故障で動けず。
○6月16日大雨で市内マヒーム地区の築40年のアパートが崩壊、死傷者が発生。
○6月10日には、2日間降り続いた雨で61ヶ所で排水ポンプが作動せず、75ヶ所で木が倒れ、8ヶ所で壁が崩壊した。
○クンテ・ムンバイ市行政長官は、例年並のモンスーンにも拘わらずこのような事態が発生していることは関係者が義務を果たしておらず、もはや「人災」であると発言。
○大雨のために農地が水浸しになり野菜が腐ってしまい、トマト、玉ねぎ、ジャガイモといったインドの食卓に欠かせない野菜の値段が倍近くになった。更に、コリアンダー、グリーン唐辛子、生姜など通常はおまけに付いてくるものも無料ではなくなっている。

  モンスーンは始まったばかりで9月頃まで居座りますので、ムンバイ市民の雨との付き合いはこれからも続きます。

  報道にもありましたが、6月16日、インド北部のウッタラカンド州で大雨により鉄砲水が発生、ヒンドゥー教の聖地でもある山あいの町が押し流され、巡礼者を含め800人以上が死亡、未だ数千名が行方不明と言われています。日本政府は、国際赤十字社を通じ20万ドルの緊急援助を実施しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。

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住宅地の大雨(邦人Fさん撮影)                        モンスーンの雨雲(筆者撮影)        
 

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