インド人俳優アミタブ・バッチャンのハリウッド映画デビュー
インドのムンバイは映画産業が盛んです。インド映画は最近日本でもボリウッド(Bollywood)映画として公開されファンも少しずつ増加してきているようです。ボリウッド映画の特徴は、恋、歌そして踊りです。劇中で踊られる集団舞踊はボリウッド・ダンスとして有名で、ムンバイのダンス・スクールで教えているところもあります。
ボリウッド映画の歴史は古く、今年2013年はインドで最初に映画が作られて何と100周年だそうです。ムンバイ市を1時間ほど車で行った丘陵地帯にFilm Cityと呼ばれるところがあり、ボリウッド映画の撮影場所として利用されています。今年のカンヌ映画祭には日本からも数本の参加作品があったようですが、インドからも作品が出展され、映画祭のレッドカーペットを歩くインド人映画俳優達の写真が毎日の新聞を賑わせました。
カンヌ映画祭に参加したインド人俳優でアミタブ・バッチャン(Amitabh Bachchan)という方がいます。バッチャンさんは70歳を超えた今も映画やテレビに大活躍の俳優さんですが、ムンバイの新聞が行っている男性インド映画俳優ランキングではいつも3~4位につけています。バッチャンさんは今年公開される予定のハリウッド映画「華麗なるギャツビー(The Great Gatsby)」に出演してのカンヌ行きでした。インドではとても有名な方ですが、ハリウッド映画への出演は初めてということで、当地のG2という雑誌が米国総領事館との共催で5月の末にバッチャンさんの出席を得て、「アミタブ・バッチャンのハリウッド映画デビュー」とのタイトルでトークショーを企画し、私も観客として招待されました。
バッチャンさんは元々アナウンサーになりたかったと言われるほど、綺麗なバリトンの声の持ち主でもあり、英語もインド訛りはあまりありません。トークショーはご本人が司会者の質問に答える形で進みましたが、興味深かったのは、ボリウッド映画とハリウッド映画の制作現場の違いでした。バッチャンさんが出演した場面の多くはオーストラリアの映画スタジオで行われたようですが、驚いたのは、撮影に当たって監督も俳優(その場面に出演する以外の俳優も含む)も事前に時間をかけて演技の流れや俳優の細かな動きについてとにかく議論を尽くしたと言うことです。ボリウッド映画では撮影時間との関係から、撮影前の議論はあまり行われず、どちらかというと、現場で監督を中心に動きが決まって行くようです。更に、バッチャンさんは映画の中でインド人としてではなく欧米人の役柄で出演しましたが、同じ場面の出演者が、映画には写らない衣装の裏地にまで舞台となる1920年代に流行ったデザインのものを使うなど、セットや衣装、その他の小道具に至るまで非常に細かいところまでこだわって作られているところに映画制作者の熱意が表れて素晴らしかったと語りました。他方で、バッチャンさんは、今後もハリウッド映画への出演の可能性があるかとの問いに対しては、否定はしないながらも、インド映画が大好きであり、インド映画により多く関わっていきたいとの希望を述べていました。会場には招待客に加え、多くのマスコミが参加していましたが、ビック・ビー(Big B)と呼ばれるバッチャンさんの人気の高さを示していると思います。
インドの人々は、映画が大好きです。ムンバイ市内にも多くの映画館があります。より多くのインドの人々に日本の良さを知ってもらうためにボリウッド映画を日本で撮影してもらえないかとの企画があります。日本を舞台としたボリウッド映画がインド国内で上映されれば、日本をもっと知りたいと思うインド人が増えるのはないかと思います。その企画の成功を応援したいと考えています。
G2社提供 左側がバッチャンさん
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