『総領事メッセージ:着任1年を経て』
皆様,こんにちは。ムンバイに着任して1年が経過致しました。
マハーラーシュトラ州,グジャラート州,マディヤ・プラデシュ州その他多くの皆様より温かい歓迎,ご支援を頂いており,日本とインドの関係が政治,経済,安全保障その他様々な分野においてこれまでになく良好であることを実感するとともに,当地における日本の大きなプレゼンスに勇気付けられます。
それとともに当地のとてつもない潜在性と人口規模に驚かされます。
一例としまして,ムンバイ市圏は2,300万人を擁すると言われ,ムンバイを州都とするマハーラーシュトラ州だけでも1.15億人と日本の総人口に匹敵します。更に,当国の人口の約半分は25才以下,また,約三分の二が35才以下と若いコミュニティーを成しており,少子高齢化社会と人口減少が深刻な日本とは全く対照的です。 昨今,日本とインドは,特別戦略的グローバル・パートナーシップの下,両国首脳のどちらかが毎年相互訪問しており,昨年9月には安倍総理夫妻がグジャラート州を訪問され,両首脳間の戦略的会談は新たな段階へと深化しました。また,経済分野では,当地における日系企業進出が著しく,数々の進出関連レセプションに参加・ご挨拶させて頂き,多くの地元のビジネスマンとも懇談する機会がありました。
特に,政府開発援助(ODA)分野において,インドは日本の最大の被援助国であり,2016年度は,円借款を中心として約3,700億円に及びます。当地においても,我が国の援助案件として,①ムンバイ・アーメダバード間を2時間で結ぶ「高速鉄道建設計画」,②ムンバイにおける初めての「地下鉄」となる「ムンバイメトロ3号線建設計画」,および③ムンバイ市の半島とインド本土に位置するナビ・ムンバイ間の約22kmを6車線の橋・道路で結ぶ「ムンバイ湾横断道路建設」も目下進行中です。
さて,前述の様々な分野における日印関係が促進される状況の下,「人と人の交流」,「観光促進」,「文化交流」における分野において更なる関係強化の可能性が秘められています。例えば,日本のお隣の中国からは年間640万人(2016年)が訪日していますが,インドからの訪日者は僅か12万人(同年)と五十分の一に過ぎません。日本から中国への訪問者は,260万人(同年)に対して日本からインドへの訪問者は22万人と十二分の一程です。他方,今後インドの中間所得層の拡大に応じて日印間の訪問者数の増加が十分期待され,JNTO,JETRO,日系各航空会社とも協力しつつ,日印両国間の観光促進を図るセミナーを数多く開催しています。
「人と人との交流分野」の促進において,日印両国自治体間の姉妹関係の果たす役割は極めて重要です。
ムンバイ市と横浜市は,50年以上に亘る歴史的な姉妹都市であり,ムンバイには横浜市職員が派遣されています。マハーラーシュトラ州と和歌山県の姉妹関係の下,和歌山県職員の当地派遣に加えて,両者がそれぞれ世界遺産(高野山,アジャンタ仏教遺跡他)を有していることから,JICAの技術協力の下で和歌山県より専門家がアジャンタ遺跡の観光センターに派遣され,「おもてなし」の技術協力が実施されました。同州プネ市には日本庭園があり,同市と岡山県の姉妹関係による協力の象徴となっています。ムンバイ港と大阪港も密接な関係を維持しています。
加えて,グジャラート州と兵庫県が姉妹関係にあることから,同州の最大都市であるアーメダバード市と神戸市間において友好都市関係に向けての動きもあります。今後は,西インド(マハラシュトラ州とグジャラート州)と関西地域(和歌山県,大阪府,兵庫県,岡山県)間の地域的な関係強化も期待されるところです。
実に,今年初めのトロント大学による人口予測によれば,2050年に,ムンバイ市が4,250万人となり世界最大の都市となるとされています。現在のムンバイの人口が,今後30年強で二倍近くになるとの予想です。既にムンバイ市は人口過密状態で,一日に7,000トンのゴミが発生している,大変な交通渋滞,住宅不足,大気・海洋汚染その他の問題が顕在化しています。
前述のように,我が国はODAを通じ当地においてインフラ整備を中心に,都市の公共交通分野の改善に大いに貢献しています。また,我が国は自国の高度経済成長の過程で様々な公害や環境問題を経験しており,これらに真剣に取り組んできました。特に,①都市計画,②公共交通,③ゴミ処理等の環境対策分野を始め様々な分野における日本が蓄積した経験・技術をもって当地に協力できることがたくさんあると思われます。
二国間関係を一層深化すべく,皆様とご一緒に考えていきたいと思う次第です。
 平成30年6月20日  在ムンバイ日本国総領事
野田亮二 |