ムンバイ芸術家の福岡アジア文化賞受賞

  先月の10月26日、歴史的な町並みが広がるムンバイ市フォート地区にある古式豊かなヨット・クラブにおいて、「福岡アジア文化賞」の受賞記者会見及びレセプションが行われました。受賞されたのは、ナリニ・マラニさんというムンバイ出身の画家(女性)です。マラニさんは、映像と絵画を組み合わせた大がかりな空間造形を通して、宗教的対立や、女性への抑圧、環境破壊など、今日的且つ普遍的なテーマに挑み続け、アジアを代表する美術家として、国際的に評価されている、と言うのが受賞の理由だそうです。当日は福岡市から百武国際部長さん他が来られ式を運営し、メディア関係者、芸術家、有識者等当地を代表する方々が出席されました。また私も招かれてお祝いの挨拶をさせて頂きました。

  「福岡アジア文化賞」は、福岡が古くから日本の窓口としてアジア諸地域との交流において重要な役割を担ってきたとの特性を踏まえ、アジア地域の優れた文化の振興と相互理解及び平和に貢献するとの考えから、福岡市及び同地域の学界、民間が一体となって1990年に創設されました。大都市とは言え、福岡市という地方公共団体が24年もの間国際的な同賞を継続的に運営されてきたことは素晴らしいことであり、多くの市民の理解と支援に支えられてきた証拠であると感動しました。日本の地図では九州の福岡は西の外れですが、アジア大陸から見れば一番近い日本です。距離的にも、福岡市から中国の上海と名古屋はほぼ等距離になるそうで、物の位置づけというものは見方によって全く変わってくることに気づきます。福岡らしい視点からの賞とも言えます。

  福岡賞は4部門に分かれており、マラニさんは芸術・文化賞を受賞されたましたが、今年はその他に大賞がペシャワール会代表の中村哲先生、学術研究賞がオーストラリアのアジア研究者テッサ・モーリス・スズキさん、もう一つの芸術・文化賞はタイの映画作家アピチャッポン・ウィーラセタクンさんが受賞されました。また昨年にはインドの環境哲学者であるヴァンダナ・シブァさん(女性)が福岡賞の大賞を受賞されています。嬉しいことに同賞の海外受賞者の中で、インド人の受賞者数は、今年で中国、韓国に肩を並べ最多(8名)となったとのことです。実は私は今年の初めムンバイで開催されたある講演会に出席したのですが、講演をされたインドの著名な歴史学者であるロミナ・ターパルさん(女性)も1997年の福岡賞受賞者であることを後日知り、同賞の裾野の広さに驚きました。インド伝統弦楽器シタールの演奏者でビートルズにも影響を与えたと言われる音楽家故ラヴィ・シャンカールさんも1991年の受賞者です。マラニさんの受賞を記念して9月から福岡の美術館で受賞記念特別展示会も行われており、福岡賞を通じて日本とインドの相互理解が益々深まることを祈りたいと思います。

photo

 

" RETURN "